万葉集で令和の歌は?原文や現代語訳、令和の意味をわかりやすく解説

新元号「令和」が発表されて1週間。世間全体からの印象も概ね好印象のようですね。そして今、名称の由来となった万葉集が今注目を集めています。現代語訳や、わかりやすい解説の本をご紹介します。

 

万葉集とは?

 

7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、全20巻の日本最古の和歌集です。
和歌の作者は天皇から農民まであらゆる地位・階層・職種の人々で、地域も東北から九州まで広範囲の日本各地から集められたました。

 

諸説ありますが、収められた和歌でもっとも古いのは629年に即位の舒明天皇以降、最後の歌は759年(天平宝字三年)と見られており、その間の130年間に読まれた4500首が収録されています。

 

 

参考までに、万葉集とそのあとの歌集の特徴と時代区分はこのようになっています。

 

出典:進研ゼミ中学講座より
https://chu.benesse.co.jp/qat/14401_s.html

■万葉集
作成時期:奈良時代
特徴:現存する日本最古の歌集(約4500首)
天皇から貧しい農民の歌まで含まれる
山上憶良(やまのうえのおくら)の「貧窮問答歌(ひんきゅうもんどうか)」など
■古今和歌集
作成時期:平安時代
特徴:日本最初の勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう:天皇や上皇の命令によって編集された和歌集)
(約1100首)
醍醐天皇(だいごてんのう)の命令で,紀貫之(きのつらゆき)らが編集
■新古今和歌集
作成時期:鎌倉時代
特徴:勅撰和歌集(約2000首)
後鳥羽上皇(ごとばじょうこう)の命令で,藤原定家(ふじわらのさだいえ)らが編集

 

 

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万葉集を作った人は?

 

制作者・編纂者や作られた経緯については、実は詳しくわかっていません。

ただ、一人の編集者ではなく130年の間に何人もの手が加わり作られていったそうで、最終的に大伴家持の手によって20巻にまとめられたとの意見が有力です。

 

なお、「万葉」の「葉」とは、「世=時代」の意味。
万世まで伝わるようにと祝賀を込めた命名と考えられています。

 

万葉集の歌の種類は大きく3つ

万葉集の内容は、大きく3つ「雑歌」「相聞」「挽歌」に分類されています。

 

「雑歌」…行幸や遊宴、旅などさまざまな折の歌であり、晴れやかな歌が多く含まれています。

「相聞」…お互いの消息を交わし合う意で、親子・兄弟姉妹・友人など親しい間柄で贈答された歌も含まれますが、多くは男女の恋の歌。

「挽歌」…人の死に関する歌。

 

万葉集からは、自然を敬い、人生を憂いたり賛美したりする日本人の繊細さが感じられます。
驚くのは、その表現方法を身分関係なく誰もがもっていたということ。

 

日本人の識字率が古い時代にさかのぼっても高いことは知られていますが、読み書きだけでなく美的センスやウィットまでを短い歌に盛り込めるのはすごいことです。

この国民性は、世界を見渡しても他には類を見ません。

 

 

令和歌はどれ?作者は?

 

出典は、万葉集の「梅花の歌三十二首」からです。

 

天平2年(730年)に「梅花の宴」という宴会が開かれました。
そこで梅花の歌32首が読み上げられたのですが、その時の漢文で書かれた「序文」がこの句だそうです。

 

詠み人は、大伴旅人とも山上憶良ともいわれていますが、歴史上作者不明となっています。

 

原文

「于時、初春月、氣淑風、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」

書き下し文

「時に、初春の月(れいげつ)にして、気淑く風らぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫らす。」

現代日本語訳の一例

「時は初春の令い(よい)月であり、空気は美しく、風は和やかで、梅は鏡の前の美人が白粉で装うように花咲き、蘭は身を飾る衣に纏まとう香こうのように薫らせる。」

(出典:Wikipedia ※「万葉集」の三十二首、「梅花(うめのはな)の歌」より)

もっとわかりやすく日本語訳

「春の初めの良い月にさわわかな風が柔らかく吹いている
その中で梅の花が美しい女性が鏡の前でおしろいをつけているかのように
白く美しく咲き宴席は高貴な人が身につける香り袋の香りのように薫っている」

=「厳しい寒さのあとに春の訪れをつげるように見事に咲き誇る梅の花」

=「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」という意味。(安倍晋三談話より)

 

 

「おめでたい月を表す「令月」と、風のここちよさを表す「気淑風和」の「令」と「和」の文字を合わせて「令和」とした」とのことです。
(出典:産経新聞2019.4.8「新元号が希求するものとは 令和に学ぶ万葉びとの和魂漢才」より)

 

令和という二文字の中には、この歌で描かれている梅の花のように日本人が明日への希望を咲かせる国でありますようにとの願いが込められていました。

 

本来「令」は、「よい」「りっぱな」という意味で使われていた漢字。

「令」に威圧的な「号令」「命令」を連想するという人もいますが、元号決定においては「よい」「りっぱな」の方の意味で採用されたと言われています。

 

 

万葉集を知るための本

 

全原文を現代語訳「万葉の秀歌」 (ちくま学芸文庫)

 

【amazon解説より】

宮廷の貴族が、秘めた愛や篤き友情を詠み交わした「相聞歌」。防人が異国の地で望郷の想いをうたった「防人歌」。農民が戯れに紡いだユーモアあふれる「東歌」。古えの日本の心を豊かに伝えてきた『万葉集』全4500余首より珠玉の252首をセレクト。万葉研究の第一人者があらゆる地域、階層の万葉人の心に寄り添い、歌に隠された数々のドラマや四季折々の日本の風景に想いを馳せながら、丁寧に味わい、深く読み解く。巻一から二十まで順を追って辿り、それぞれの巻の歴史的背景や、用語などの基礎知識を学びつつ鑑賞できる『万葉集』解説の決定版。

 

漫画で読む 「万葉集─まんがで読破」

 

【amazon解説より】

雄略天皇から大伴家持に至るまで、万葉時代のさまざまな和歌を集めた歌集『万葉集』。この時代をふり返ってみると、大陸の脅威を感じはじめた古代日本人の姿があった。激動の時代のなかで人々はどのような想いを歌っていたのか?今なお日本人を惹きつけてやまない、日本文学の原点とも言える名歌の数々を漫画化。

 

 

 

英語で読む「英語でよむ万葉集」 (岩波新書)

 

 

【amazon解説より】

英語を母語としながら、現代日本語文学の作家として活躍する著者が、独自の感性で万葉集の約50首を英訳し、エッセイを加えた。
英語で読むことで、万葉集が描き出す雄大で厳かなイメージが、より一層広がるように感じられる。

 

 

ご参考になれば幸いです。

 

 

 

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