絵本読み聞かせが、子どもの情操教育や学力向上にとても効果的であることはよく知られています。さまざまな分野の専門家が、なぜ、どのように子どもの発育に影響しているのかを検証をした国内の論文や書籍を調べてみました。
Contents
幼児の影響・効果を検証した論文・書籍
「読み聞かせ」をすると、発育中の子どもはどのように刺激を受けているのでしょうか?幼児教育・脳科学・発達心理学などさまざまな分野で調査が行われてきました。
研究結果報告の論文・文献の一部です。
(表記は「論文タイトル」-「著者」-「発表年度」の順)
言語能力を育てる
『本を通して絆をつむぐ―児童期の暮らしを創る読書環境』
秋田喜代美・黒木 秀子 編(2006)北大路書房
『絵本は愛の体験です』松居友(2000)洋泉社
『絵本の力』柳田邦男・松居直・河合隼雄(2001)岩波書店
学力を育てる
「絵本の読み聞かせで学力を育てる」『日本語学』谷木由利(2005)
『12歳までの読み聞かせが子どもの「地頭」をつくる!』
ランディー 由紀子 (2015) WAVE出版
12歳までの読み聞かせが子どもの「地頭」をつくる! /WAVE出版/ユキコ・ランディ-
精神を安定させる・攻撃性が抑えられる
「小児病棟における読書療法の適応可能性―絵本の読み聞かせを中心にして―」
『日本読書学会研究大会発表資料集』
高橋久子・城戸梨花(1987)
「小児ぜん息児における読書療法とその経験 絵本の読みきかせを中心にして」
『同愛医学雑誌』
増田梨花・馬場実(1988)
精神を安定させる・恐怖の軽減
「絵本の読み聞かせの心理療法的効果の検討―小児科の診療待ち時間における読書療法的アプローチ―」
『岩手大学大学院人文社会科学研究科研究紀要』
小川香織(2008)
自律神経が安定する
「絵本の読み聞かせによる生理学的指標の変化-鼻部皮膚温度の測定から-」
『日本臨床生理学会雑誌』
増田梨花・谷中広明(2010)
脳や心のメカニズムを調査
「読み聞かせ」をすると、聞いている子どもの脳の「大脳辺縁系」=「心の脳」が活発に働くことが研究から明らかになっています。
『読み聞かせは心の脳に届く』
泰羅雅登(2009) くもん出版
中学生への読み聞かせ調査
中学生への読み聞かせを学校で1年間ボランティアが行い、生徒からの感想を分析した結果がまとめられています。
受験勉強の疲れや対人関係の悩みの多いこの時期のストレスを、読み聞かせが緩和したという報告です。
「絵本の読み聞かせの教育的効果の研究」 - 兵庫教育大学
読んであげる人の変化を調査
読み聞かせ(音読)するときの脳機能を調査
声を出して読むのが脳に良いことも研究で明らかになっています。
この研究によると、黙読よりも音読するときのほうが、前頭前野の血流が増加しているとのこと。
子どもの教育だけでなく、読み聞かせる大人への効果(認知症予防など)もあるとのことです。
『脳と音読』
川島隆太・安達忠夫(2004) 講談社
「脳血流計(NIRS)を用いた朗読聴取時の脳活動の評価に関する研究」
『室蘭工業大学 SVBL』
古谷礼奈・魚住 超(2009) SVBL 年報
絵本は読ませるのではなく読んであげるべき理由
「読み聞かせる」ことがなぜ大事なのかをまとめている論文です。以下、一部引用します。
絵本は,読ませるものではなく読んであげる本である。
「もう字が読めるから自分で読みなさい」と強制することが子どもを本嫌いにするともいわれている。なぜなら,子どもが字を拾い読み出来たとしても,お話の内容がほとんど理解できず,おもしろくないからである。親に読んでもらった方が何倍も良く理解でき,何十倍も楽しいのである。
「幼児期の心を育む読み聞かせの実践研究ー絵本の教材化を通して」
教育センター教科研修課指導主事・幼稚園副園長らの共著
読み聞かせで育った大人の調査
こちらは読み聞かせをされて育った人へのアンケート調査です。
「絵本の読み聞かせがその後の人生に及ぼす影響」 - 鳴門教育大学
教員養成系大学の学生293名へのアンケート調査(2015年・2016年)
読み聞かせ経験の有無・読み聞かせてくれた人・時期・影響について質問
質問結果:
読み聞かせ経験があるのは293名中、274名。
その経験者のうち、良い影響があると答えたのは197名。
価値観・道徳 20%
能力形成(学習効果など)22%
感性・情緒 55%
その他 3%
この研究では、子どもの頃に絵本読み聞かせ体験のあるほとんどの人がその経験を「良い思い出」として捉えており、精神面や学習面で効果を実感していることを明らかにしています。
絵本読み聞かせアプリでもOK?
最近では、読み聞かせしてくれるスマホアプリも登場し、忙しいときや長時間退屈させないようにする工夫としてはとても役立つと思います。
アプリではどうだったか?という調査結果は、調べましたが今のところ見つけることはできませんでした。
ページをめくり、めくることで軽く風圧を感じ、本特有のにおいを嗅ぎ、ページがこすれる音を聞き、鮮やかな色彩とかたちを目で追ってそのシーンに入り込むイメージをする。
この臨場感は、現物の絵本と読み手にはかないません。
しかし、スマホやタブレットならではの長所もたくさんあります。
タッチで反応する仕掛けやゲームはデジタルツールならではの魅力。
親子で一緒に驚いたり遊んだりできるので(ときには親の方が夢中になったりして笑)、コミュニケーション力UPや親子のふれあいに大きく役立つことでしょう。
読み聞かせアプリ「森のえほん館」
日本の昔話やグリムやイソップなどの名作が500冊以上読み放題。プロの声優による朗読は、大人も聞いていて癒されると評判です。
●App Store
https://itunes.apple.com/jp/app/hui-benga-dumi-fang-ti-jiao/id605346659
●Google Play
https://play.google.com/store/apps/details?id=tv.kidsstar.app.PictShandyGaff&hl=ja
まとめ
「読み聞かせで学力は上がる」ことを実証した文献は、このように多数ありました。
ここで紹介しているのはほんのごく一部。調べてみて、国内外ともに発表されている論文や書籍の多さに圧倒されました。(研究者でも教育者でもない、いち子育て経験者としてわかりやすいと思った文献だけをご紹介しました)
さまざまな資料を読むと、読み聞かせることで精神面が安定し、それが土台となっていろんなことへの集中力が高まり、学習のときの吸収がよくなるという図式のように思えました。
面白いと思ったのは、子どもの知育や情緒安定だけでなく、読んであげる大人にとっても脳によい刺激が認められているということ。
また、難しい思春期の十代にとっても緊張をほぐしてあげる効果があるというのも驚きでした。
実は私は子どもが小さかった頃、私が毎晩遅くまで仕事して疲れ切っていたため、十分に読み聞かせをしてあげなかったことを後悔しています。
読み聞かせのためには、まず「絵本をゆっくり選ぶ」時間から必要なんですよね・・・
そのかわりによくやっていたのが、一緒にふとんに入って電気を消して創作物語。
子どもたちを主人公にして、冒険するお話をどんどん創作して語っていました。
恐竜も好きなTVアニメのキャラもどんどん登場させて仲間になっていくというストーリーが多かったのですが、毎回興奮して逆に寝付けなかったものです(笑)。
あまり本を読んであげていませんでしたが、うちの子どもたちにとっては、これが絵本読み聞かせと同じような思い出として残っているようです。
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